ポジショニングステートメント 例:赤ペンで直した五つの見本
要約
ポジショニングステートメントは、製品の買い手、課題、カテゴリー、便益、代替手段を決める社内向けの一文です。ムーアのテンプレートを使えば、曖昧な下書きを具体的で検証できる文に直せます。その文はデッキのリード文の源になりますが、スライドにそのまま貼るべきではありません。本記事では、HubSpot が作成した例文の添削と、架空の Ledgerlane を使った書き直しの過程を示します。
デスク3、午後11時24分。毎週のように編集部に届く下書きがあります。会社全体が寄りかかるはずの一文です。「私たちは、チームが仕事の未来を切り拓けるようにする次世代プラットフォームです。」この文には、顧客が指させる名詞がひとつもありません。良い ポジショニングステートメント 例 は逆をします。買い手、課題、カテゴリー、信じられる理由を名指しして、そこで止まります。以下では、有名ブランドの文を行ごとに赤ペンで直し、今夜そのまま使えるテンプレートも用意しました。
ポジショニングステートメントとは何か、何でないか
ポジショニングステートメントは、社内向けの一文か二文です。製品が誰のためのもので、何に取って代わり、なぜ勝つのかを伝えます。キャッチコピーではありません。サイトのトップに置く一行でもありません。社外の人が目にすることは、本来ありません。
多くの ポジショニングステートメント 例 の特集記事は、この二つを混同しています。企業の理念ページから一文を引いてきて、それをポジショニングと呼び、読者にキャッチコピーを真似させるのです。キャッチコピーは覚えてもらうためのものです。ポジショニングステートメントは、社員全員が暗記できるまで議論し尽くすためのものです。
基準はジェフリー・ムーアの『Crossing the Chasm』(1991年)のテンプレートです。Vashor が要約した形では、次のとおりです。「(ターゲット顧客)にとって、(ニーズや機会)を抱える(製品名)は、(製品カテゴリー)であり、(主要な便益)を提供します。」続く一文は「(主要な代替手段)と違い、当社の製品は(主要な差別化)を提供します」です。
二文で、六つの空欄です。失敗の大半は、その空欄の中で起きます。
五つの例を、コピーとして赤ペンで直す
以下の文は、HubSpot が自社の記事のために作成した例文です。HubSpot 自身が書いたものであり、各社の公式な文言ではありません。引用は抜粋し、日本語に訳しています。
Amazon(HubSpot 作成の例): 「Amazon は、ワンストップのオンラインショッピングサイトです。」
判定: これは立場ではなく、カテゴリーです。買い手がいません。競合の理由も、信じる理由もありません。どの小売店でも署名できる文です。「ワンストップ」は、ウェブより古い決まり文句です。赤ペンで消し、「その買い手は、いま誰から離れようとしているのか」と問うべきです。その答えがなければ、この一文はロゴの付いた埋め草にすぎません。
Nike(HubSpot 作成の例): 「ハイクオリティでファッショナブルなアスリートウェアを求めるアスリートのために、Nike は高性能なスポーツウェアを提供します。」
判定: 文法は正しいのですが、中身は堂々巡りです。「アスリートウェア」と「スポーツウェア」は同じ名詞の繰り返しです。「ハイクオリティ」と「高性能」も同じ形容の繰り返しです。テンプレートは埋まっていますが、何も決まっていません。繰り返しを消すと、残るのは「アスリート」と「ウェア」です。それは商品一覧です。
Mural(HubSpot 作成の例): 「大規模な視覚的コラボレーションを必要とする組織のために、Mural は、どこからでも仕事に想像力をもたらします。」
判定: 前半は役に立ちます。「大規模な視覚的コラボレーション」は、ホワイトボードでは足りなくなった企業という、実在する課題を持つ買い手を名指ししています。後半は「仕事に想像力を」という、休憩室のポスターのような言葉に流れています。前半は残し、後半は、Mural でできて共有スライドではできないことに置き換えてください。
Alaska Airlines(HubSpot 作成の例): 「私たちは、人々が愛する航空会社を作っています。」
判定: これは立場ではなく、目指す姿です。その点では正直で、理念の一文としては機能します。営業チームの文としては失敗です。「愛される」は、競合の運航スケジュールと比べて測れないからです。
Apple(HubSpot 作成の例): 「最高のパーソナルコンピュータやモバイル機器を求める個人のために、Apple はテクノロジー業界をリードします。」
判定: 「最高」と「リード」は、根拠のない主張です。テンプレートは信じる理由を求めていますが、返ってきたのは自慢です。赤ペンは、確認できる数字をひとつ、比較をひとつ求めます。何でもよいので、検証できるものを。

五つの例には、同じ型があります。強い例は、一つ目の節で買い手を名指ししています。弱い例は、事実があるべき場所で最上級に頼っています。ご自身の下書きに「最高」「リーディング」「次世代」が含まれているなら、その一文はまだ完成していません。
五つの空欄と、多くの創業者がつまずく場所
ムーアの形式は、判断を強制する仕組みです。空欄ごとに一つの問いがあり、それぞれに典型的な誤答があります。
一つ目の空欄は、ターゲット顧客です。誤答は「助けを必要とするすべての人」です。正解は、明日 LinkedIn で見つけられるほど具体的な顧客層です。例えば「デザイナーのいないシード段階のB2B創業者」です。
二つ目はニーズです。誤答は機能です。正解は、顧客がすでに感じているコストで、時間か金額で表せるものです。
三つ目はカテゴリーです。誤答は、自分で作り出したカテゴリーです。買い手は、すでに知っているカテゴリーで検索します。Vashor が挙げる典型的な誤りの一覧も、少なくとも最初は、買い手が理解しているカテゴリーの中で位置づけよ、と述べています。
四つ目は便益です。一つ選んでください。同じガイドは、複数の便益を並べることに警告しています。選べないなら、顧客と十分に話せていないということです。
五つ目は代替手段です。誤答は、誰も検討していない競合です。正解は、買い手が今日していること。新興企業の場合は、たいてい、スプレッドシート、代理店、あるいは何もしないことです。「従来型の大規模スイートと違い」より「スプレッドシートと違い」の方が強い文です。
下書きを、公開の場で直す手順
以下は架空の例です。誰も恥をかかないように、Ledgerlane という架空の請求書ツールを使います。以下の事例と数字はすべて創作です。最初の下書きはこうです。
Ledgerlane は、企業が請求業務のワークフローを効率化できるようにする、次世代の金融プラットフォームです。
一回目は、形容詞を削ります。「次世代」は何も言っていません。「できるようにする」はプレスリリースの動詞です。残るのは「Ledgerlane は、企業の請求業務を効率化する金融プラットフォームです。」です。
二回目は、買い手を名指しします。「企業」は誰でもありません。インタビューで分かった本当の顧客は、スプレッドシートで請求書を管理している、二〜十人のデザインスタジオです。「支払いの遅い請求書をスプレッドシートで追いかけている、二〜十人のデザインスタジオのために」と書き換えます。
三回目は、カテゴリーと便益を選びます。「金融プラットフォーム」ではなく「請求書ツール」です。「業務を効率化する」ではなく「数週間ではなく数日で入金される」です。
四回目は、本当の代替手段を書きます。競合は別のSaaSベンダーではありません。スプレッドシートです。
最終的なステートメントは次のとおりです。
支払いの遅い請求書をスプレッドシートで追いかけている、二〜十人のデザインスタジオのために、Ledgerlane は、クライアントと同じスレッドでリマインドを送ることで、より早く入金させる請求書ツールです。スプレッドシートと違い、請求書を誰が開いたかを把握しています。
曖昧だった一文が、検証できる一文になりました。創業者は十のデザインスタジオに電話をかけ、それが本当かどうかを確かめられます。ポジショニングステートメントの要点はそこにあります。仮説であり、仮説は反証可能でなければなりません。
社内向けの文を、デッキには載せない理由
ここで創業者がよくやる失敗があります。ポジショニングステートメントを完成させると、それを二枚目のスライドに貼り付けてしまうのです。やめてください。
DocSend のプレシード向けガイドによると、投資家はデッキを判断するのに平均4分10秒をかけています。12枚のスライドで約250秒です。その時間を、二文・六つの空欄の数式を読むために使う人はいません。
ステートメントは元になる文で、デッキに必要なのはリード文です。読者が最初の七秒で出会うバージョンです。新聞社も同じことをします。社内メモには「この記事は、コック郡の年金の積立不足についてです」と書かれています。掲載された見出しは「シカゴの年金の穴は、いまや予算より深い」です。事実は同じで、語り口が違います。
Ledgerlane で言えば、次のようになります。
社内のステートメント: 上記の二文。
一枚目のリード文: 「デザインスタジオは、入金まで38日待っています。Ledgerlane はそれを9日にします。」(創作の数字です)
営業メールの件名: 「御社の入金が遅れている請求書、整理します。」
三つの形式の裏には、一つの判断があります。三つが互いに矛盾するなら、ポジショニングはまだ完成していません。先にステートメントを直してください。

載せるべきでない例の見送りリスト
「Unlike」の文は、代替手段が曖昧なら省いてください。「従来のソリューション」との比較は、逃げに見えます。買い手が今何をしているかを書くか、その節ごと省くかです。
「革新的」という語を含むポジショニングステートメントは見送ってください。それは自己評価で、判断するのは読者です。
B2Bで売っているなら、大手消費財ブランドの例は見送ってください。コカ・コーラが「爽やか」と言えるのは、棚のスペースと習慣で競っているからです。シード段階のSaaS企業は、特定の痛みで競います。近い手本は、仕事、顧客層、測れる成果を名指しする文です。
価値があるのは、二つの版を書き、五人の顧客で両方を試すことです。説明なしにうなずかれた版が勝ちます。補足の質問が必要になった版は、ゴミ箱行きです。
役立つツールと、できないこと
いくつかのデッキツールは、プロンプトからポジショニングのスライドを生成できるようになりました。レイアウトは得意です。判断は得意ではありません。
Gamma は、アウトラインから完成したプレゼンテーションを素早く作ります。無料プランでは、一回のプロンプトで生成できるカードは10枚までです。構成の最初の下書きには向いています。ただし、カテゴリーが間違っていることは教えてくれません。
Beautiful.ai は、Smart Slides で余白と階層の一貫性を保ちます。Pro は年払いで月額 $12 です。ステートメントができてからは便利です。それ以前では、整ったレイアウトが曖昧な主張をより自信ありげに見せるだけです。
Skywork の Slides エージェントには、出典を示すリサーチモードがあります。信じる理由に数字が必要なとき役立ちます。ただし、その数字は本当でなければならず、主張はご自身のものでなければなりません。
どのツールも、ステートメントを入力として受け取れます。ただし、それを生み出すインタビューの代わりにはなりません。まず手で文を書き、そのあとでツールに整えさせてください。

一枚で使えるテンプレートと、出版前の検証
顧客が認識できる名詞で、次の空欄を埋めてください。
【具体的なセグメント】にとって、【すでに感じているコスト】を抱える【製品名】は、【買い手がすでに検索しているカテゴリー】であり、【測定できる一つの便益】を提供します。【今顧客がしていること】と違い、【外部の人が検証できる違い】を提供します。
ファイルに入れる前に、次の四つの検証を行ってください。
社外の人に声に出して読んでもらいましょう。意味を聞かれた言葉は、置き換えてください。
競合他社の名前を入れ替えてみてください。文がそのまま成り立つなら、それはカテゴリーの説明であり、ポジションではありません。
動詞を探してください。「後押しする」「可能にする」「活用する」なら、より強い動詞を探してください。
五人の顧客に、最初の節が自分たちに当てはまるかを尋ねてください。三人がうなずかなければ、書き直してください。
検証を通るステートメントは、覚えられるほど短く、外れうるほど具体的です。それがデッキのリード文に求める基準であり、その元になる文にも同じ基準が必要です。
入稿。プリンターズ・ロウ、午後11時17分。